引用元:<https://gigazine.net/news/20180330-spacex-starlink-approved/>
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4000基以上の人工衛星で世界中にネットを提供するSpaceXの「Starlink」計画に当局からゴーサインが出る
4000基以上の小型人工衛星を地球周回軌道に打ち上げて巨大なブロードバンド通信網を作り、インターネットを地球の隅々にまで届けるSpaceXの「Starlink」プロジェクトが、アメリカ連邦通信委員会(FCC)の承認を受けたことが発表されました。実際に運用が始まると、月額5000円程度の料金を払ってノートPC程度の大きさのアンテナを設置することで世界中のあらゆる場所で高速インターネット接続が可能になるとみられます。
FCCは2018年3月29日、SpaceXの名称でサービスを提供している「Space Exploration Holdings, LLC」に対し、4425基の非静止人工衛星を建造し、展開することで、衛星を使って通信する業務「固定衛星業務」を世界中で運営する認証を行ったことを発表しました。これにより、SpaceXは世界で初めて人工衛星網を用いたブロードバンドネットワークサービスを提供することが認められた事業者となり、本格的に地球のあらゆる場所にネット環境を提供する計画にゴーサインが出されました。
比較的国土の狭い日本に住んでいるとあまり感じることはありませんが、国土の広いアメリカや、アフリカ大陸諸国では十分に速度の速いインターネット環境を確保することが容易ではない場所が残されています。通信環境の構築には、利用場所までケーブルを引く有線方式と、一定のエリアごとに無線基地局を建てて電波を届ける無線方式がありますが、いずれもインフラの整備にコストがかかり、へき地や人口が少ない地域ではコスト面でなかなか整備を進めることができません。そのために十分なネット環境にアクセスできないデジタル環境への障壁「デジタルデバイド」が存在することが問題とされています。
そのような問題を解決するために、宇宙から電波を送受信することでいつでもどこでもインターネット環境を提供しようというのがStarlinkの狙いです。SpaceXのイーロン・マスクCEOはこの計画を2015年頃から進めてきており、今回ようやくその実現に向けた大きなステップをクリアしたことになります。
SpaceXではすでにStarlink実現に向けた人工衛星の打ち上げを実施しています。2018年2月にSpaceXはStarlink用の2基の人工衛星「Microsat-2a」と「Microsat-2b」を打ち上げており、高度約1000kmの地球周回軌道上からKuバンド(12~14GHz)の信号を送受信する実験が行われています。
実際に4425基もの人工衛星の打ち上げが完了するにはまだもう少し時間がかかりますが、SpaceXのFalcon 9ロケットやFalcon Heavyロケットを使って順次打ち上げが進められる予定とのこと。FCCは4000基超の人工衛星のうち半数を、今後6年以内に打ち上げることを求めています。FCCはアメリカのテレビ局CNBCに対し「今回の決定により、FCCはアメリカの高速ブロードバンド網の利用可能性と競争力を引き上げるための新たな一歩を踏み出しました」と声明を発表。
また、SpaceXの広報担当者はThe Vergeの取材に対して「当社はFCCによる詳細な検証に感謝します。この複雑なシステムを形にするためにはまだまだすべきことが残されていますが、今回の決定はSpaceXが次世代の人工衛星ネットワークを構築し、全世界を信頼性が高く、利用コストの低いブロードバンドサービスを提供して今はインターネットが使えない人にもネット環境を提供できるようにするための重要な一歩です」と声明を発表しています。
実際に4000基もの人工衛星が地球を周回するとどんなイメージになるのか、YouTubeにはその様子を描いたムービーが投稿されています。
また、RedditではStarlink計画の詳細を解説するスレッドも立てられています。
主要な説明をピックアップしてみると以下のような感じ。全貌はRedditのページで確認してみて下さい。
打ち上げられる人工衛星について
・申請書類によると人工衛星1基の重量は386kg
・衛星写真サービスおよびリモートセンシング、航空測量のための機能を含む
・寿命は5年
・運用終了後は大気圏に突入させて処分
・まず1600基が打ち上げられ、その後2825基を打ち上げ。実際のサービス提供開始は800基の打ち上げが完了した段階から。
「フェーズ2」では7518基の人工衛星をさらに高度が低い軌道VLEO (very-low-Earth orbit)に投入し、通信帯域幅とping速度の向上を図る
システム全体の通信帯域幅
1基あたりの通信幅は20Gbpsのため、総合計1万2000基を使った通信の場合だと、20×12000=240000Gbps(24Tbps)となる見込み。
4425基もの人工衛星の打ち上げに要するロケット発射回数
Falcon 9ロケット1基あたりで打ち上げられる人工衛星の数はおよそ25基程度のため、最大で177回の打ち上げが必要。5年間で全数を軌道に投入するためには、年間およそ36回の打ち上げが必要。
Falcon Heavyロケットではおよそ40基の打ち上げが可能になるため、最大で112回の打ち上げが必要。5年間で全数を軌道に投入するためには、年間およそ22回の打ち上げが必要。
打ち上げと運用にかかるコスト
マスク氏は2015年時点で、必要なコストを100億ドルから150億ドルと試算。(約1兆600億円~1兆6000億円)
Falcon 9ロケットの改良やFalcon Heavyロケット、さらに大きな「BFR」を活用すればコスト圧縮の可能性も。
電波を受信するために必要なアンテナ
宅配ピザのボックス、あるいはノートPC程度の大きさを持つ平面のフェーズドアレイアンテナが必要。価格は100ドル~300ドル程度。(約1万1000円~3万2000円)
アンテナは空に向けて人工衛星が見通せる角度で屋根などの屋外に設置。
このアンテナにより、ギガビットレベルでの送受信が可能。
予測される月額利用料金
あくまで予測の段階だが、月額50ドル(約5300円)を下回ると予測。
期待できる通信速度
まだ詳細については何も発表されていないため不明。
提供されるネットワークの種類
IPv6よりシンプルでパケットオーバーヘッドの小さいもの。(peer-to-peer方式か)
ファームウェアレベルでエンド・ツー・エンドの暗号化され、現代の技術では解読は困難。暗号化技術は進化に合わせてアップデート予定。
通信帯
Ku帯およびKa帯
Googleとの関係
GoogleはSpaceXに数千億円規模での出資を確約済み。Googleの人工衛星と技術をシェアするというウワサも。
光ファイバー網に対する人工衛星ブロードバンドの利点
・光ファイバーは伝達速度が光の31%から50%程度に低下するが、真空中の電波は完全に光の速度で進む。
・光ファイバーの敷設にはさまざまな規制があるが、人工衛星からの電波には規制がない。
人工衛星ブロードバンドのデメリット
・人口密集地で通信が集中するとオーバーロードしやすい
・天候により通信電波が減衰してしまうことがある
・スペースデブリなどによって破壊されることがある
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スケールが違いますね。
つながるっていうのは思ったより大変なことみたい。